パティ・スミスのライブに行ってきました。オーチャードホールは初めて。

PattiSmith2012

会場に着くと、「福島の子供たちへ」という募金がされていて、一口250円で1枚くじのようなものがもらえて、当たった人にはパティの楽屋へご招待とのこと。会場の都合上ドリンク代がかからなかった代わりに、2口(500円)募金してきました。

座席は中央後ろの方というまずまずの位置。BGMはずっとレゲエがかかってた。クラッシュのカヴァーとか。19時を5分くらい回った頃、照明が落ちメンバーが壇上へ!


1曲目はセオリー通り去年の新譜から「April Fool」。新譜は「クイーン・オブ・パンク」のエッジを期待するとやや肩透かしを喰らう、オーソドックスに聴かせる曲ばかりのアルバムですが、これはこれで熟練の渋みがあっていいんですよね。この時点で観客はほぼ総立ちでした。客層的に仕方ないけど音ちっさかったのが残念。


何曲目かで、スポットライトのみが灯り、パティが一人でアコギを手に「I went to Sendai...」と歌い出します。そう、一昨日はジャパンツアーの一発目、仙台公演があったわけです。パティは被災地に実際に足を運んだりしたらしい。この人は本当に日本のことを思って歌い、自分のことのように悼んでくれているんだなぁと……(僕は基本的にこういうお涙な演出には弱いです。リアムが2011年4月に日の丸をバックにアクロス・ザ・ユニバースを歌ってくれたことは忘れられない)。

基本的に選曲は新譜からでしたが、それぞれ細かいところが面白かった。「Fuji-San」ではステージに和太鼓が登場。富士山だから和太鼓というベタというか安直というかですが、ちゃんとした和太鼓奏者の方がゲスト出演して、引き締まった音になってて意外に良かった。
新譜のタイトルトラック「Banga」を始める前のMCは、それまでの慈愛に満ちた「母」の顔から「パンクの女王」の顔に一転、「東京の犬ども!」と会場を煽る。ギターの人と一緒に犬の遠吠えの真似を披露すると、客席からも「ワオ~~ン」みたいな声が聞こえてきて、何だこれ笑うしかねーな。

客席からの「I love you! 」の声に「I love you too!」と返し、名曲「Because The Night」のピアノが流れ出したところは、本編中一番痺れました。


他にも「People Have The Power」の大シンガロングもハイライトのひとつと言っていいでしょう。それと、僕は楽屋ご招待くじ引きには外れましたが、本日だけで募金は30万円集まったそうです。当たった方にはドラムヘッドのプレゼントもあり(公式サイト参照→http://www.pattismith.net/jobs.html)。



で、アンコールです。ここからが圧巻だった!
「Rock N Roll Nigger」のカッコよさったらもう目が霞むレベルでした。まず最初のポエトリー・リーディング。内容が全部理解できたわけじゃないですが、彼女の声の持つ説得力ってこういうことですよ。英語の意味がとれたのはせいぜい7割くらいなのに言いたいことは全部伝わる。「あなた達は自由だ!」と。
そのままどんどん加速していく演奏は本日最高のグルーヴ。「マハトマ・ガンジーはNiggerだ!アウトサイド・オブ・ソサエティ!」ってシンガロングはホントどうかしてる。ちなみに、この曲は昨日までのセットリストには入ってなかったってこと聴いて、今日を選んでよかったなーと心底思いました。


そしてそのまま雪崩れ込む最後の「Gloria」!! 完璧。

アンコール前までパティはほとんどギターを持たず、持ったとしてもエレアコだけだったんですが、アンコールの途中から2回だけ黒のストラトキャスターを手にとった時がありました。ちょうど上に貼った動画のように、曲の途中にスタッフから受け取って。
バックバンドによってそれまで鳴らされていた演奏はどこにも隙のない完璧なものだったはずなのに、パティが弦をかき鳴らすと(弾くのではなくて文字通り掻き鳴らすだけの乱暴な演奏)、まるで「その空間はパティのために空けられていた」かのように、ストラトの騒音がピタリとハマる感覚があったんですよね。言葉遊びのようだけど、そこまでは「ボーカリスト、パティ・スミスとそのバックバンド」だったのが「パティ・スミス・バンド」になったとでも表現すればいいんだろうか。
震災の被害を悼むヒューマニズムや、「People Have The Power」に象徴されるようなアジテーションではなくて、それよりももっと根源的な、プロト・パンクあるいはロックンロールの衝動。このエレクトリックギターの音こそが、「エレクトリック・レディランド」を人生の1枚に挙げるパティ・スミスによる、ロックンロールの宣言だったように思えました。その瞬間、あんなに小さかったパティの姿から途轍もないオーラを感じたんですよ。あれが30年選手の「格」なんだろうなと。去年、The Whoのロジャー・ダルトリーを見たときのことを思い出さざるを得なかった。こういう人種は、年をとることによる衰えよりも、年齢を重ねることによる説得力のほうが勝るんだろうなと、だからこそ年齢がハンディキャップにならないんだろうなと、パティ・スミス御年66歳を見てそう強く思いました。I hope I die before I get oldとか言ってんじゃねーよと。

ちなみに、僕の席からはちゃんと見えなかったんですが、最後はギターの弦を引きちぎっていたそうです。笑


尻上がりに調子もテンションも上げてきた素晴らしいパフォーマンスでした。開演前はレゲエ一色だったBGMですが、終演後はジミ・ヘンドリックスに変わっていました。パティ・スミスをこのタイミングで見られたことはとてもいい財産になるなあと思っています。物凄いパワーを貰った。正真正銘の本物だった。


※追記
[Setlist]
1. April Fool
2. Kimberly
3. Mosaic
4. Fuji-San
5. My Blakean Year
6. Dancing Barefoot
7. This Is The Girl
8. Beneath The Southern Cross
9. (Cover Medley)
10. Because The Night
11. Pissing In A River
12. Banga
13. People Have The Power
En1. Rock N Roll Nigger
En2. Gloria

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