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写真はピッチフォーク・メディアより。
Lonnie Holleyという人のアルバム『Keeping a Record of It』に、我らがブラッドフォード・コックスが参加してるとのことで聴いてみました。

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このロニー・ホーリーという人、元々は彫刻家として名を馳せた人らしく、すでに御年63歳です。実際に彼のアートはちゃんと評価されているらしく、アメリカの著名な美術館に作品が展示されているとのこと。彼が最初に手がけた作品は火事で亡くなった姪っ子(甥っ子かも)の墓石だったそうです。が、グーグルで画像検索をしてみれば分かる通り彼の現在の作品群は鉄クズやら何やらのスクラップを組み合わせた独創的なもので、こんなこと言ったら僕の文化資本の貧しさが露呈するかもしれませんがゴミと間違えそうなやつばっかですね。笑
で、肝心の音楽ですが、ゆったりとしたパーカッションが延々とループする中で、おそらく即興で歌われているであろうメロディが単調に進んでいくのが1曲目「Six Space Shuttles and 144,000 Elephants」。面白いんだか面白く無いんだかよくわからない感じです。2曲目は更に即興度が増してほとんどアカペラ。全編を通して中心にあるのはロニーの歌唱です。鼻歌をそのままアルバムにしたような、あまりにも自由な音楽。どこにも力が入っていない。
ブラッドフォードが参加しているのはラスト2曲(うち1曲は13分超もあります)で、おそらくドラムを叩いてます。DLで購入したのでクレジットが手元にないのですが、ドラムを叩いてる写真がありました。ちなみにブラッドフォードの仲良しさんであるブラック・リップスのコール・アレキサンダーも参加してる模様。


ブラッドフォードとロニー・ホーリーの繋がりがいつからあったのかはわかりませんが、先日ブラッドフォードがキュレーターを努め行われたAll Tomorrow's Partiesに彼の名前がありました。で、もう少しググってみたらさすがエレキングさんはこういうのもしっかりチェックしてるらしく、僕より遥かにしっかりまとめてありました。実はこのアルバムはロニーの2枚目なんですが、1stアルバムの方にもブラッドフォードとコールの名前がクレジットされているとのこと(参照:http://www.ele-king.net/review/album/003042/)。

それにしても、1stアルバムの「Just Before Music」も膝を打ってしまうような素晴らしいタイトルだと思うんですが、この2ndアルバムも秀逸。「記録を残し続けろ」ですよ。和訳が手間なので上述のエレキングからまんま借用しますと、 
最後に、その〈ダスト・トゥ・デジタル〉のことにも触れておこう。彼らのウェブサイトによれば、その使命は「重要な稀少音源と、アーティストとその作品への理解を促す歴史的図版や詳細なテキストを組み合わせた高品質な文化遺産の制作」にあるらしい。1999年に先に触れたスティーヴン・ランス・レッドベターによって設立され、現在では妻のエイプリルと二人三脚で運営されているジョージア州アトランタのレコード・レーベルである。(引用元:http://www.ele-king.net/review/album/003042/
だそうです。
Wikipediaを読んでみたら、ロニーのエピソードにこんなものがありました。80年代から彼は貪欲に創作活動を続けていたわけですが、例のジャンク・アートを大量に作りまくった挙句そいつらが自宅の庭から溢れだして、隣接していたバーミンガム国際空港まではみ出していったそう。で1996年に訴訟沙汰になるんですが、空港側が彼の作品を市場価値の14000ドルで買い取ると申し出たところ、これを突っぱねて25万ドルを要求したそうです。俺の作品にはそれだけの価値があると。結局、訴訟の結果彼は165,700ドルを手にしたとのことです。

世の中には、自分の足跡を全部残しておかないと気がすまない人っていうのがいますよね。著書の多い学者なんてその類だと思うし、頻繁にリマスターや昔のライブ音源やデモ音源をリリースするミュージシャンもそうだと思う。もっと身近な例を挙げれば、僕たちだって、読書メーターやらLast.fmやらTwitterやらで何もかもを記録しようと思えばできる世の中です。
で、ロニーもそうなんでしょう。そして彼は「全部記録しようぜ」って言った上で、インプロヴィゼーションみたいな音楽をやっちゃうという。俺のやることにはすべて価値があるんだ、全部残しとけ、ということなんじゃないのかな。それを、このDust To Digital、「ゴミをデジタルへ」という名前のレーベルでやっちゃう、何という一貫性。そこがカッコいいなと。
 
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そういえば、このロニーのアートのセンス、ちょっとだけディアハンターの『Monomania』に通じるものがある気がするんですよね。ていうか、ブラッドフォードはロニーの作品が好きなんでしょうね。僕はブラッドフォード・コックスというアーティストをこの世で最も信頼しているので、彼の感覚も信じようと思います。というわけで、僕と同じようにブラッドフォードのことを信頼している人は、ぜひこのロニー・ホーリーの2ndアルバムも聴いてみてください。





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宣伝。
Lomophyという、ピッチフォークを中心とした海外音楽メディアの記事翻訳サイトに参加しています。僕が訳したものはdanceneedleeというタグが付いています。
http://lomophy.tumblr.com/tagged/danceneedlee

最近僕がUPしたものは、ペイヴメント、アリエル・ピンク、スティーブ・ガンなどです。どれも(僕の訳はさて置き)いいレビューだと思うのでぜひ読んでみて下さい。というか僕以外の役者の方々もとても素敵なチョイスで記事を書いていてくれているので、どうぞご贔屓にお願いします。個人的には、マイブラのケヴィン・シールズのインタビュー記事の翻訳がメチャクチャ面白かったです。あとはジュリアナ・バーウィックやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのレビューなんかも。

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