引き続き、ベスト10。
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◆10. Current 93 "I Am the Last of All the Field That Fell (A Channel)" [The Spheres]
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 David Tibet という人が率いるカルト音楽集団。
 先日のブログで紹介したんだけど、それ以上でも以下でもなくて、要するによくわかんないけど良い・・・というやつです。ハマってます。ピアノが良いです。悪魔降臨の儀式みたいな音楽。昔はもっとノイズとかインダストリアルって感じの前衛さだったらしいのですが、今作はかなり上品な感じですね。


◆9. Mirah "Changing Light" [Absolute Magnitude]
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 90年代から活動するシンガー・ソングライターの5年ぶり・5枚目のアルバム。 
 Deerhoof のドラマーが参加してたりするんですが、このアルバムの目玉はやっぱりこのとびきり甘い彼女の歌声に尽きますね。ヴォコーダー使ってるこの曲が作中でいちばんメロウだけど、他の曲も最高です。



◆8. Pink Mountaintops "Get Back" [Jagjaguwar]
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 多作家 Stephen McBean によるソロ・プロジェクトの名義。「アリエル・ピンク以降」のクラウトロックとでも言うべき1曲目が抜群の疾走感とトリップ感で最高なんだけど、2曲目からはオアシスみたいなシンプルなギターロックになるという変な作品。とくに3曲目「Through All The Worry」なんて声までリアム・ギャラガーに寄っててこれホントにUKのバンドじゃないの? って気分になります。しかしこれがなかなか佳曲揃いで良い、結局1曲目にはだまされたけど騙されてよかったアルバムっていうことになりました。



◆7. Marram "Sun Choir" [Transgressive North]
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 英エジンバラのバンド、Marram のデビューアルバム。インドの不可触賤民の子供たちを支援するためのチャリティ作品で、オーウェン・パレットやジャーヴィス・コッカーといったゲストが参加してます。流麗なオーケストラル・ポップ+エレクトロはそのまんまオーウェン・パレットを借用していて、色彩豊かで素敵。さらにジャーヴィス・コッカーが歌う曲はどれも最高なので、オーウェン・パレット自身のアルバムより断然こっちのほうが僕は気に入っております。

 

◆6. Woods "With Light and with Love" [Woodsist]
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 ブルックリンのフォーク・ロック・バンド、Woods の2年ぶりのアルバム。前作に満遍なく散りばめられていた攻撃的な「トゲ」が綺麗に抜き取られて非常に聴きやすいアルバムになってるんだけど、今作ではその代わりに9分超におよぶジャム・ロック・ソング「With Light And With Love」がぶっこまれてまして、これがものすごくカッコいい。ラスト30秒の部分をあと3分くらい続けてくれてもいいのに。 

 

◆5. Shocking Pinks "Guilt Mirrors" [Stars & Letters Records]
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 ニュージーランドのインディーロックバンド。7年ぶりの新作だそうです。インディーロックバンドっていう呼び方はこういうバンドにこそ正しく用いるべきなんじゃないかな、と思うくらいこのアルバムにはインディーの精神が宿ってると思う。
 まず3枚組とかいう設定無視していいのでとりあえず1枚目聴いてみるのがいいです。去年の年末の時点で「これは来年のベストトラック候補だな」と確信した「Not Gambling」をはじめ、意外にポップなのでサラッと聴けると思います。すると2枚目以降はドローンやらノイズやらが差し挟まれてくるので、ここから先に進むかは自己判断で。でも、結構聴きやすいんだこれが。なぜか。ちなみに、アナログレコードだと1枚分に収まるように編集されているらしいです。 



◆4. Fennesz "Bécs" [Editions Mego]
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 クリスチャン・フェネスによる最新作。とはいえ僕は正直いままで彼の音楽にそんなに魅力を感じてこなかったので、今回も軽いノリで聴いてみたわけですが、一部のちょっと頭のおかしいリスナーが言うような「ノイズミュージックはエモい」という意味の分からない物言いについてとうとう理解してしまった。これは超絶エモミュージックだと思った。分かんない人は聴いてみてもいいかもしれないです。ヘッドホンで、とりあえずこの曲をどうぞ。

 あと、ヘッドホンでこのアルバムを通しで聴くときのアドバイスなのですが、タイトルトラック「Bécs」が始まるときは音量ちょっと下げるか、もしくはしっかりと心の準備をしておかないと絶対びっくりします。


◆3. Sun Kil Moon "Benji" [Caldo Verde]
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 元 Red House Painters のマーク・コズレックによるプロジェクト、Sun Kil Moon の最新作。今年最も海外と日本との間で評価・話題性に隔たりが大きい作品の一つだと思います。
 アコースティックギターとともに素朴に歌われるのは、あらゆる存在にいつか訪れる「死」ということについて。群像劇のように時系列や登場人物をくるくると入れ替えながら一つの世界が語られていき、最後にマーク・コズレックが自身を主人公として歌う「Ben's My Friend」で本作は幕を閉じるのですが・・・。僕の想像の中でこのアルバムのラストシーンとして描かれる風景、それをもう一度見たいがためにこのアルバムを聴いてしまう、そういう魔法のかかったアルバムです。上半期一番思い入れのあるのはコレ。

 とにかく歌詞を読まなくちゃ始まらない部分があるのでぜひ国内盤を出してほしいと思っていたんですが、サリンジャーさんによる歌詞の全曲和訳が完成したのをまとめたので、ぜひこちらもどうぞ。
 →http://togetter.com/li/665349
 

◆2. Cloud Nothings "Here And Nowhere Else" [Carpark Records]
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 米オハイオ州クリーヴランド出身のインディー・ロックバンドの最新作。同じオハイオでもマーク・コズレックとは真逆の音楽性ですねえ。
 これについてはもう何も言うことがない・・・。前作を聴いて僕がネチネチ垂れた文句を全部跳ね返すような素晴らしい傑作を出してくれた。ライブも最高でした。

 

◆1. The Antlers "Familiars" [Anti-]
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 ドリーム・ポップからスロウコアへ。米ブルックリンのインディー・ロック・バンド、The Antlers の5thアルバムを一言で表現するならそうなると思います。
 本作は、3rd アルバムで繰り返し歌われた美しいメロディと、ドリーム・ポップが一つのトレンドとなった時代に作られた4th のサウンド、その統合体なのですが、ジ・アントラーズがもう一歩先に進むために選んだのは「遅さ」の追求だったと思うのです。4th アルバムリリース後まもなく発表され、失敗作の烙印を押された『(Together) EP』(彼らに一貫して高得点を付けてきたピッチフォークが3.0)や、『Undersea EP』収録の「Endless Ladder」あたりを今聴き返せば彼らがスロウコアに接近しようとしていたことは明らか。そして、今作でとうとう、やろうとしていたことをきちんと結実させることができた、ということは3曲目「Hotel」を聴けば一発でわかると思います。極限まで抑えられたBPMでミニマルなフレーズを延々と繰り返す、これは完全に初期 Low や Red House Painters がやってたこと。

 もちろん、彼らの従来からの魅力である美しいメロディが損なわれていないことは「Palace」を聴けばよくわかります。トランペットをはじめチェロやトロンボーン、サックスやチューバといった楽器を大胆に取り入れてロウや RHP の単なる焼き直しになることを回避し、Peter Silberman のボーカルはよりセクシーになっているし、完成度の高い大人のアルバムになっております。どこをどう切り取っても最高、完璧。



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以上が僕の上半期ベストディスクでした。ベストトラックは Sun Kil Moon「Ben's My Friend」。
ではでは、下半期もよろしくお願いします。今月はフジロックだ!

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