Hospice

音楽の話がメインの日記帳です。

 前回(30~16位)の続き。
 2010年代も今日で半分を終えることになります。半年前にリストアップした「今ディケイドの30枚」、いま改めて選びなおすと結構変わりそうだなと思います。来年も、今ディケイドの残り5年も、その先もずっと素晴らしい音楽に出会えることを期待して、とりあえず僕が今年歩んできた道を確かめるように、年間ベスト上位15枚!


15. Freddi Gibbs & Madlib “Piñata” [Madlib Invazion]
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 今年こそヒップホップもたくさん聴くぞ、と思いつつ結局あんまり手が回らなかったのですがこれはカッコ良かったです。サイケデリックでドープなマッドリブのトラックがバッチリ好み。
 


14. Shocking Pinks “Guilt Mirrors” [Stars & Letters]
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 何でこんなことしちゃったの、と軽く説教したい3枚組160分という脅威の大作。1枚目だけ聴けば所謂インディー・ロックの範疇で捉えられるんだけど2枚目・3枚目はもっと実験性が高まってきて・・・。しかし、その長さも間違いなくこのアルバムの魅力であり、このバラエティにこそ必然があり、2014年現在のインディー・ミュージックの総決算的なダンス・パンク・アルバムとなっています。とはいえまぁ、別に通して聴かなくとも、適当に気に入った曲をつまみ食いするだけで十分楽しめるかなと。



13. Merchandise “Enemy” [4AD]
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 今まで彼らが纏っていたアート志向や前衛志向(それはときにスノビズムとも揶揄されるけど)は脱ぎ捨てられ、このアルバムはもはやスタジアム・ロックとも言えそうな大文字のポップ・ミュージックとなっています。そう、ポップ・ミュージック。そして、ギター・ミュージック。彼らのアンダーグラウンド感に魅力を感じてきた人たち(僕含む)にとってはこの変化は咀嚼しきれないところもあるけど、いやーエモいんだなあこれが。
 「True Monument」のアウトロで低音がフェードアウトして、シャカシャカとイヤホンの音漏れみたいに聴こえるところ、大好きです。

 

12. Spoon “They Want My Soul” [Loma Vista]
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 こんなに正道でかっこいいロックってまだ作れるんだなーと大変感動しました。今更コロンブスの卵でもないけど、絞りこまれた音数のひとつひとつが果てしなくシャープ。そういうところを踏まえてストロークスの1stと比較する向きもあるようだけど、個人的にはザ・サウンドとかその辺のポスト・パンク勢のスカスカ感のモダン・アップデート版的に聴いていました。違うか。

 

11. Swans “To Be Kind” [Mute / Young God]
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 US地下世界の暗黒皇帝マイケル・ジラ率いるスワンズ、前作同様に極悪2枚組。アンダーグラウンド・ノイズの色気もあるのに音的に隙間があって、あとジラの微妙にコミカルですらある声質が何とも絶妙な空気感を感じさせます。喜劇的な部分があるからこそ底知れない闇の部分が引き立つというか、先行トラックの「A Little God In My Hands」や「Oxygen」はそういう面白さがあって、反復ビートがそれを拡声して闇世界をビルドアップしていく過程の強烈な陶酔感。個人的ベストトラックは最初から最後まで狂気しかない17分間のジェノサイド「She Loves Us」。中盤以降の超カッコいいリフと、畳み掛ける歌詞がすさまじい。<お前の名前はファック!ファック!ファック!ファック!ハレルヤ!ハレルヤ!>



10. Fennesz “Bécs” [Editions Mego]
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 どこまでもエモーショナルなギターと美しいメロディ。ノイズ・ミュージックの本質ってきっとゴミの中に美を見つけることなんでしょう。でも、こんなに音のいいアルバムにはゴミの部分なんて一瞬たりとも無くて、ただただ広がっていく淡い世界にズブズブと浸るのみ。トーン・ホークのアルバムはグズグズの音から突然飛び出してくる最高な音にトリップするアルバムでしたが、こちらは最初から最後まで最高。そういう意味で対偶にあるアルバムだなと思っています。
 


9. Grouper “Ruins” [Kranky]
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 また女性一人ユニット。静かなアルバムだから寝るときによく聴いたけど、本当は、ヘッドホンでデカめの音量で聴く1曲目が一番こみ上げてくるものがあります。心臓の鼓動と同期するキック、遠くから響いてくるカエルの声・・・。このアルバムはこの1分半のイントロダクションから入らないと聴いた気がしない、というか意味合いが変わってきちゃうなあと思います。そんな1曲目の曲名が「Made of Metal」で、最終曲が「Made of Air」(11分あるアンビエント・トラック)なんですが、これ聴いてると、あー人って死ぬんだなみたいなものすごいセンチな気分になります。タイトルの意味は<破滅>。



8. Cloud Nothings “Here and Nowhere Else” [Carpark / Mom & Pop]
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 揺らぎまくるリズムとひたむきにかき鳴らされるギターはまるでライヴ・アルバムを聴いているような気分にさせてくれますが、実際に6月に見た彼らのライブと比べてもこのアルバムの熱量はいささかも劣らない、というかまるであの熱狂を真空パックしたかのようだと言っていいと思います。前作までずっと気になっていた各楽器の分離感がほぼ無くなり、ひとつの音の塊のように駆け抜けていく魂のアルバム。理想的。



7. FKA Twigs “LP1” [Young Turks]
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 今年は裏アクト的女性一人ユニットに好きなのが多かったと先に書きましたが、彼女は裏アクトでもなんでもなく正真正銘2014年の顔でしたね。プロデューサーに参加しているサンファのフルアルバムは結局今年は出ませんでしたが、サンファやアルカといった気鋭の若手プロデューサー陣の影響よりも彼女自身のセルフ・プロデュースのほうが僕の好みだったようで、期待値に見合うすごいアルバムになったと思います。ていうか歌めっちゃうまい。

 

6. OGRE YOU ASSHOLE “ペーパークラフト” [P-VINE]
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 すごく難しいアルバム。「ムダがないって素晴らしい」を初めて聴いたときは本当に激烈に感動しましたが、「他人の夢」や「いつかの旅行」あたりの歌詞はちょっと強烈すぎるというか。「東京インディー」的なシーンとは明確に距離を置き、孤高の存在となりつつある、僕がいま世界で一番好きなロック・バンド。



5. Julian Casablancas + The Voidz “Tyranny” [Cult]
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 引き算の美学を知っている人が、あえて足し算しかしなかった、軽薄でいて今年最も熱かった一枚。「Crunch Punch」のアウトロのサンプリングや「Nintendo Blood」なんかに所謂「インターネットっぽさ」を取り入れてみたり、ハード・ロック的なリフとかメチャクチャな変拍子とか、本当に雑多な要素がごちゃ混ぜになっているものの、それをすべて塗りつぶすジュリアンの強烈な個性のせいで結果的にアルバムとしてまとまっているのはストロークスの4thとの違いか。いやはや、僕は本当にこの人が好きだなあ。


4. The Antlers “Familiars” [Anti-]
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 全編にわたり響いているレイドバックしたホーンの音と、ますます上手くなったピーター・シルヴァーマンのボーカルがAORのようなアダルトな魅力を放ちつつ、このアルバムの本質はそのスロウコア的アプローチにこそあると思います。ブルックリンにバンドは数あれど彼らのような音楽はアイディアと能力が両立していないと成り立たない。いま僕がもっとも来日を希望しているアーティストなのですが・・・とりあえず国内盤すら出ない状況が悩ましい。
 


3. D’Angelo and The Vanguard “Black Messiah” [RCA]
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 これはもうロック好きとかソウル好きとか関係なくただただ圧倒されるとしか言いようがないというか。ただ話題になってるから聴いてみたってだけの僕がこれなんだから、10年以上も待っていた人がこれをついに聴いたときの感動って本当にすさまじかったんだろうなあ。前作『Voodoo』よりも断然ココロにもカラダにもキました。だってこれはジミヘンだったから。



2. Happyness “Wired Little Birthday” [MAGNIPH]
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 南ロンドンから来るスリーピース、彼らハピネスには今年のベスト・ニューカマーの称号を与えたいところです。クリスマス生まれの男の子がキリストに嫉妬する「Baby, Jesus (Jelly Boy)」、<モントリオールのロック・バンドのあいつは髪がない>とウィン・バトラーに喧嘩を売る「Montreal Rock Band Somewhere」と、スケールの小さい反逆を繰り返す彼らがかき鳴らしたのは、ペイブメントやスパークルホースの頃から何一つ更新も変革もない時代遅れのカレッジ・ロック。ひねくれた歌詞と真っ正直なソングライティング、スロウコア成分とローファイ・インディー感という、僕が求めるインディー・ロックの全てがここにあったという今年最高に泣ける一枚でした。
 上述の「Montreal~」はじめ、以前にリリース済みのEPの曲(全部名曲)が日本盤にコンパイルされているので、ぜひそちらのほうをオススメします。


 
1. Sun Kil Moon “Benji” [Caldo Verde]
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 人が生きる上で、あらゆる形で向き合わねばならない他者との死別、自分の老化、そしてサン・キル・ムーンことマーク・コズレックが向き合い続けてきた、彼の愛する音楽に対する思いを、「僕はこう思う」という言葉を一切用いずに語りきった、奇跡のような私小説的レコード。ウォー・オン・ドラッグスとのビーフ騒動ですら、彼の本作に対する真摯な思いを引き立たせる味付けのように(今となっては)思えてくるくらいでした。
 スロウコアというジャンルの草分けとなった初期レッド・ハウス・ペインターズを彼の第一の全盛期とすれば、第二の全盛期はRHP『Old Ramon』~SKM『Ghosts of The Great Highway』期となるのかな(RHPは好きなアルバムが分かれるのでこの辺は異論あると思いますが)。そして僕はこの『Benji』こそ彼の第三の全盛、そして最高傑作だと確信しています。まず、いままでにあった穏やかで優しい歌唱はいくぶんその温度を下げ、歌詞も淡々とした事実描写に終始しポエジーを排除しようとしているかのようで、従来のファンからすると戸惑うところもあるでしょう。しかし、眼前の事実を冷徹に見つめる彼の視線は、いままでの彼を凌駕する圧倒的な深みと滋味をたたえており、ただただ優しく包み込むようなあたたかさを備えていた今までの彼の歌とは一線を画しています。その結果、群像劇のように構成された本作のストーリーを解きほぐそうと、こちらから能動的に「聴きにいく」という姿勢が求められる作品になったと思います。それゆえに、これほどシンプルな弾き語りを中心としたアルバムが、何度聴いても新たな側面を見つけうる多面体の輝きを放つ芸術となったのです。
 ちょっと熱っぽくなってしまいましたが、このアルバムは僕にとって間違いなく一生ものの作品となりました。あなたにとってもこの一枚が豊かな時間をもたらすことを願って、本作に関する日本語の記事(ピッチフォークのレビュー訳を含む)と歌詞の全訳をまとめましたので、時間のあるときにこちらを眺めながらゆっくりと聴いてみてください(歌詞を訳してくれた@D_J_Salingerさんに感謝!)。
  【歌詞全訳あり】 Sun Kil Moon "Benji" について - Togetterまとめ
    →http://togetter.com/li/665349 


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