Hospice

音楽の話がメインの日記帳です。


 OGRE YOU ASSHOLEのライブを見に仙台へ行ってきて、彼らのライブを2ヶ月ぶりに見ていろいろ思ったことをまとめようと思ったのだが、うまくまとまらないのでとりあえず思いついたことをダラダラと書き留めておこうかと思う。
 一応は昨年リリースの『ペーパークラフト』ツアーと銘打ってはいるものの初期の曲から直近3部作までをバランスよく組み込んだセットリストだった。会場の仙台HOOKは定員200程度の小規模なハコであったが少なくとも12月に足を運んだ仙台Park Squareより音は良かった。彼らのライブを見るのは5~6回目だけどそのたびに新しい発見がある。というか彼ら自身マンネリズムを嫌悪しているのは明らかであって、2時間に及ぼうかという彼ら史上最長のライブの中でOYAは数分おきにその表情を変えていった。開演前SEで流れていたジャーマンプログレに着想を得たと思しき打ち込みを主体としたアレンジに始まる「ロープ(meditation ver.)」や、ダブ化した前半からかろやかな急展開を見せる「フラッグ」、MVB「You Made Me Realize」のライブにおけるノイズ・ピットを彷彿とさせる苛烈な演奏の上にほとんど聞こえないポエトリー・リーディングを重ねてみせる「ペーパークラフト」に至るまで、そのアレンジワークの振幅は、2011年頃から彼らが取り組んできた「ロック・バンドという形態の中でどこまでやれるのか」という挑戦がみごとに結実したことをしめしているといってよいと思う。あえて「挑戦」などと呼んでみせることにクリシェを感じないでもないが、ボアダムスがもはやバンドという形態を歯牙にもかけず突き進んでいったのと対照させれば彼らの本気度がよくわかる。実際、『homely』を作る時点で彼らは3部作を構想していたわけだし。ロック・バンドという形態にこだわることははなにも彼ら(特に出戸学と馬渕啓)が主体的に選びとった選択肢というわけではないと思うが(彼らは『homely』でデビューしたのではないのだ)、それでも彼らのそういった姿にはロマンを覚える。いくら去年はSSWものにハマっていたとはいえ、僕の出自はリバティーンズとストロークスとアークティック・モンキーズにあるのだから。
 サイケデリック/ミニマル/クラウト・ロックというタームで語られる近年のOYAが『ペーパークラフト』であらたに獲得したのはメロウネスであると思うのだが、留意が必要なのはそれは彼ら自信が標榜する「ミニマル・メロウ」なるコンセプトと同一のものでもなければ『ペーパークラフト』収録曲においてのみそれが獲得されたわけでもないということだ。というのは、彼らがいうところの当該コンセプトにおけるメロウネスとはメロディオリエンテッドなそれであると思うのだが、僕がいまの彼らに感じるメロウとは彼ら自信いまだ完全にコントロール出来てはいない部分に宿ったポップネスとサッドネスであると感じるからである(さらに言えばメロディ起源のメロウネスなど彼らはとっくの昔に体得している)。何も僕は「ムダがないって素晴らしい」のメロディを褒めたいわけではなく、そこに託された突き抜けたニヒリズムとその影に隠れた音楽へのピュアな愛、そこにライブにおける1%の偶然性が衝突した結果の、どうしようもなく胸を打つ瞬間に、彼らのその先を見るのである。そう、それはあるときのアーケード・ファイアが持ちうる熱量であり、エリオット・スミスのいまにも壊れそうな声にともる誠実さであり、音楽の神が降り立ったキース・ジャレットのピアノの美しさであり、今日のOYAが「すべて大丈夫」でつむいだアンビバレントな感情だった。彼らの最高到達点は「ロープ」なのかもしれないが、それは第一の頂にすぎない。トータルでの完成度や緊張感、サウンドメイキングは昨年のフジロック・ホワイトステージで目撃したそれに遥か及ばなかったにもかかわらず、そういうことを思わせてくれたステージだった。

 多少腐すことを言っておくと、「ロープ(long ver.)」におけるギター・馬渕によるインプロヴィゼーションは、ノイズ及びサイケデリアという側面を過剰に強調する一方で、骨太に進行するリズム隊を上から抑圧してしまうような音圧でもって、反復グルーヴによる陶酔感を損ねている側面がある。彼らのライブのクライマックスを飾るこの必殺トラック、プロショットの映像がインターネット上に多数UPされているのだが、その中でもベスト・テイクは「dope (12inch)」収録のものだと思う。それはまさにかかるリズム隊のグルーヴが最大化されているからだ。とはいえ「見えないルール」のアウトロを体感したいま、馬渕のギターがこのバンドのアグレッシブさを担保していることもまた間違いないと感じるし、要は彼のインプロはもっと最後の最後まで取っておいてくれた方が僕の好みに合致するという話。

 今回のライブでは「夜の船」「素敵な予感」といった前作からの定番曲が演奏されなかった。代わりにオリジナルに忠実なアレンジで披露された「バランス」の爆発的な多幸感は『homely』以降のファンである僕にとってはむしろ新鮮に響いたし、今回のライブの最良の瞬間の一つといって間違いなかった。上述の「メロウネス」にもつながるが、いまのオウガが掴みかけているのは(より正確には、僕が掴んでほしいと望んでいるのは)ポップへの回帰である。ちなみにもうひとつこのライブでのベストの瞬間が「すべて大丈夫」の後半だ(「もう慣れた/ここにいて/このまま終わりが/やってくるのもいいか」)。ライブ後2~3日僕を苛みつづけた耳鳴りがいまはもう早くも恋しくなっている。

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