Hospice

音楽の話がメインの日記帳です。

 Jamie XXのソロアルバムが出るっつうことで先行曲を聴いてみたのですが久しぶりに再生開始数秒で震えるような感覚が。「別に誰と話題を共有するでもないし」みたいな音楽ばかり聴いているときに、こういうド本命のド直球をぶつけてこられると、なにか居住まいを正してしまう。一昨年のmbvや去年のD'Angeloがそうであったように、こういう才能に軌道修正されながら音楽を聴いている感覚っていうのは確かにあって、だからこそいつまでも「好きなジャンル」が決まらないんだろう。





 そんなわけで(?)、長いものに巻かれるというか偶然の機会に身を委ねるというか、新潟市で行われた Experimental Rooms #18 というイベントに行ってきた。県外からの参加はチケットが2500円という破格の安さだったのと、会場が砂丘館(日銀新潟支店の支店長の旧邸宅)という面白さに釣られたという形。
 2006年から不定期に行われていた企画らしく、僕は今回 Mark McGuire の出演アナウンスを機に初めて知ったのだが、以前はL'Altra や Julianna Berwick なんてアーティストも招聘されていたということをもう少し早く知りたかった・・・!とホゾを噛みつつ会場に向かう。高級住宅街の香り漂う街の中の、まさに「旧名家」然とした立派な和風邸宅に入り、その奥の一室に通され、畳の上に座って音楽を聴くという実に面白いイベントだった。

 まずは Mikkyoz というアーティストが登場し、スクリーンにモノクロームな映像を映しながらノイズ/ドローンを鳴らしていた。去年の Fennesz のアルバムに端を発してこういう音楽にも興味があったのは確かだがやっぱりこれだけ聴いていても退屈してしまうので、映像付き&座って見られるというのは良かった。30分程度のパフォーマンスで、ごく普通の和室で行われているにしては音響も悪くなく、予想外に楽しめた。部屋の隅のほうで外国人がノイズに耳を傾けながら何か抽象的な絵を描いていて、インスピレーションを感じるのだろうか・・・などと思った。


 続いて hakobune というこれも日本のドローン系アーティスト。先ほどの Mikkyoz からノイズ要素を覗いたクリーンなサウンドで、これまた座って見られるというというアドバンテージにも助けられ気持よく聴けた。hakobune 氏の外見はごく普通の若者という感じで、BEER ON THE RUG みたいなレーベルからカセットを出してるという実験作家っぽい雰囲気がまるで無いところが面白かった。それから、演奏が始まる前はまだ外の明るい光が燦々と差し込んでいたが、終演の頃にはすっかり日が落ちていたのが天然の演出としていいアシストだった。


 次は Mark McGuire なのだが、僕の前に座ってライブを見ていた外国人、よく見ると先ほど部屋の隅で絵を描いていた人で、もっとよく見ると本日のメインアクト Sontag Shogun のメンバーだった。
 緊張しているというよりは、畳の上に地蔵のように座った日本人に対してどんな風に相対してよいのか感覚を掴みかねているといった雰囲気で、マクガイアは「コンニチハ、Mark McGuire デス」と小さな声で自己紹介。彼もまた畳の上に機材一式を広げ、シーケンサーと大量のエフェクターを操作しながら、このイベントにこの日初めてのリズムとメロディを持ち込む。僕が彼のライブを見るのはこれが初めてだったが、想像していたアンビエンスとは正反対と言っていいくらいの踊れるパフォーマンスで、音源から得られる緻密さはそのままにひたすらアタック感を増強したギターが本当にカッコ良かった。2曲目にやってくれた最新作からのタイトルトラック「Noctilucende」が最高で、このときばかりは立ち上がって踊り狂いたい!と思った(けど、周りが誰も立たないため座ってフンフンしていた)。


 トリはブルックリンより、Sontag Shogun という3人組。キーボードがあるのはわかったけど、その手前にテーブルが2つ向かい合わせに置いてあって、そのテーブルに謎のエフェクターやら小道具やらが大量に置いてあるのがチラッと見える。 
 演奏が始まると思いきやメンバーのひとり(さっき僕の前に座っていた帽子の人)がおもむろに立ち上がり、黒い箱状のものを手に持って座っている客の間を縫うように歩きまわっている。よく見るとそれはラジオ。そこからは所謂「ラジオっぽい音声」が鳴っていて、こういうイベントならではのやり方で空間をいろんな音で満たしていく発想に感心してしまった。小鳥のさえずりが聴こえてきたのはおそらくフィールドレコーディングした音素材をサンプリングしているのだと思うのだが、さざなみのような音は生の米をサラサラと皿の上に落としたりして出していた様子。本当の自然界の音なのか、人工的に創りだした「それっぽい音」なのか、境界を曖昧にしたまま、スピーカーのホワイトノイズさえも演奏の一部にしながらポスト・クラシカル的な音楽が目の前で生まれていく。楽器でないものからいろんな音を取り出し、リアルタイムでサンプリングしながらループさせていくそのやり方はお世辞抜きに魔法を見ているようだった。
 最後に披露された曲はこの日唯一のボーカル・トラック「Let The Flies In」で、先程はラジオを持って客席を歩き回っていた帽子の彼が今度は何も持たず(もちろん、マイクも持たず)、歌いながら客席を一周する。僕が世界でもっとも好きなボーカリストの一人である The Antlers の Peter Silberman を彷彿とさせるセクシーな美声が素晴らしかった。




 客はせいぜい数十人程度の小規模なイベントだったが、いわゆる「アットホームな」という雰囲気よりはアーティスティックで、かと言って「意識高い」かというとそうでもないDIY感のある良いイベントだった。毎回参加できるかはわからないけどもブッキング次第ではまた新潟まで足を運びたい。

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