Hospice

音楽の話がメインの日記帳です。

15-2
 さて、最終日。この日見たライブが3日間でいちばん充実してたなあと思います。でも、この日がいちばん暑かった!! 上の画像はジャスミンタイのグリーンカレーです。



7/26(日)

◆Jim O'Rourke と Gaman Gilberto @ Field Of Heaven
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 ジム・オルークとガマン汁ベルト! 前日にけっこう飲んだので朝起きられるか不安だったのですが、わりとスッキリ目覚めてさっそく奥地へ向かいました。
 バンド編成ということでしたが、波多野敦子のバイオリンの存在感がすごかった。ギターの轟音に負けないポジションをしっかり確保した伸び伸びとしたプレイはため息が出るくらい素晴らしくて、エクスペリメンタル過ぎないポップソングとして十分聴けるパフォーマンスでした。と、オルークでない部分から褒めはじめてみましたが、やっぱり主役はこのおじさんで間違いない。トップバッターながら何の遠慮もない爆音でしたが、どんなに大音量でも耳が痛くならない、ひとつ芯が通ったノイジーなギターが死ぬほどかっこよかった。ノイズってここまでカッコよく聴かせられるんだ!と大感動でした。後半に披露された『Eureka』からの「Prelude To 110 Or 220」(たしかこの曲)、序盤のクリーンな音が後半にどんどんアグレッシブなバンドアンサンブルに変化していく過程は、永遠に終わらなきゃいいのにと思ったほどでした。
 オルークの新譜は注文済みだったのですが、実は発送が伸び伸びになっていてたせいで結局フジロックまでに一度も聴けず。というわけで昔の情報からアップデート無しで見に行ったのですが、忌むべき「フェスの予習」なんて不要な素晴らしいライブでした。
 

◆cero @ White Stage
 ジム・オルークのライブがあまりにも素晴らしかったのでそのまま最後まで観たかったのですが、ラスト10分がこちらと被っていたため泣く泣く移動。
 cero のライブを見るのは初めてなんですが、始まった瞬間にうわっ文句の付けようがねえ!とちょっと引いちゃうくらい鉄壁でした。大所帯が高城さんの振るタクト(持ってたのはフルートだったけど)に合わせディアンジェとフィッシュマンズのハイブリッドみたいなグルーヴを組み上げていく。この人たち、ほんのすこし前は Rookie A Go-Go に出てたんだよね……。「マウンテン・マウンテン」から「My Lost City」という前作からの2曲でリズムへの探究心を見せ始まったステージですが、「Summer Soul」を口火に『Obscure Ride』からの曲群が始まってからはもう、演奏の強靭さとかいうレベルの次に進んでいたように思います。
 今年のフジロックで見た多くのライブの中でも、楽器演奏のダイナミズムと、歌詞の隅々まで明瞭に聴き取れるボーカリゼーションを両立させていたのは cero だけだったと感じました(まあ日本語詞だっていうのはあるにせよ)。そしてそのピークはやっぱり「Orphans」でした。詞、楽器、声、全部が超ハイレベルだった。
 オルークのクライマックスを捨ててまで観た選択に後悔はありません。これは改めて単独でたっぷり観たい。いやー、もう「センスありすぎてムカつく」とかそういうイチャモンしか僕には思いつかないです……。


 いったんヘブンに戻り Bloodest Saxophone feat. Jewel Brown を見る。暑い天気によく合っていた。


◆Todd Rundgren @ White Stage
 さて、結果から言うと今年の裏ベストアクトのトッド・ラングレンです。言わずと知れたレジェンド。ヘブンのトリとかグリーントリ前くらいで出てもおかしくないはずの人ですが。
 「今年出た新譜がクソダサいらしい」という噂を聞きつつも「ま~そんなこと言っても昔の名曲の中にちょっとギャグみたいに新曲交えてくるぐらいでしょ」とタカを括っていた僕ですが、実際にホワイトステージへ行ってみるとそこにあったのは、マイクスタンドが3本とDJ卓がひとつ……これは……。
 嫌な予感そのままに黒人DJが颯爽と登場して「Make some noise!!!!!」と場をあっためる!(あっためる?笑)で、温まったか温まってないかと言えば完全に戸惑っているうちにトッド・ラングレン御大が登場! その手には1本のギター。ピチピチのノースリーブ! 二の腕がプルンプルン! 腹もタプンタプン! kawaii文化を誤解釈した女性ダンサー! ×2!
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 「えびばーでっ! えびばーでっ! えびばーでっ! えびばーでっ!」とゴキゲンな曲で登場し観客の爆笑をかっさらうとあとはトッド・ラングレン・オン・ステージといった勢いでEDMトラックを連発。踊る御大! いや~! だせえ! ディスコですね(適当)! 
 僕みたいに、彼の音楽に特段想い入れのない客にとっては、ここまでぶっ飛んだステージはもう開き直って楽しむしかなかった。というか開き直る以前にもう、出てきた瞬間爆笑だったので、「こりゃとんでもないことになるぞ」というのは一瞬でわかりました。上に貼った写真をツイッターに投稿したもんだから、ライブ中ずっとRT&favの通知が鳴り止まなくて大変だった。ちなみにギターは最初の1曲が終わると早々に手放し、あとはひたすらハンドクラップ及びキレのないダンス(と揺れる二の腕&処理された腋)を披露していました! 開き直った客のボルテージも上がる。かたや、開き直れなかったのであろう客(長年のファンと思しき50歳位の白人男性)は腕組みをしたまま凍りついたように御大を見つめ続けていました。
 結局そのままのテンションで最期までやり切ったトッド御大の勢いに押されて、僕も最後までめちゃくちゃ楽しんでしまったトッド・ラングレン。こんなに笑って踊ったライブも久しぶりだってくらい楽しみましたングレン。見てよかったングレン! その後、誰もアンコールしてないのにもう一度出てきて踊ってくれたのも笑ったングレン。 音楽も見た目もめっちゃダサかったけど、今自分の信じた表現をやるというアティチュードだけは真剣にかっこいいなと、ほんの少しだけ思いました。


◆Johnny Marr @ Green Stage
 今年のフジロックには「ラングレン以前」と「ラングレン以降」があったわけですが、「以降」のトップバッターは泣く子も黙るジョニー・マー。
 僕がグリーンに着いてまもなく、「Bigmouth Strikes Again」が始まった。スミスの中でもトップクラスに好きな曲です。スミスはリバティーンズとかスウェードみたいに1+1が10にも100にもなるバンドだと思うので、見る前には「スミスの曲やってくれても微妙だろうな~」とか思ってたけど、恥ずかしながら大興奮してしまった。なんて綺麗なギターなんだろう・・・。その後も「There Is A Light That Never Goes Out」や「How Soon Is Now」なんかが聴けてめちゃくちゃ嬉しかった。僕みたいな甘っちょろいファンが見るぶんにはこれ以上ないくらい楽しいライブでした。


◆椎名林檎 @ Green Stage
 まあ一応見ますよね。3日間で一番人が多かったのこのときじゃないかな。最初に丸の内サディスティック聴けただけでもう十分です。ありがとうございます!


◆Ryan Adams @ Red Marquee
 今年のフジロックで最大のお目当ては彼、ライアン・アダムス。林檎を早めに切り上げマーキーに向かうも、人入りは少なめ。ただし前方まで進むと明らかに熱気が違った。噂に聞く10年前のフジロック、ライブ途中で退場してしまったという事件以来初の来日というだけあって、年季の入ったファンが期待と不安を入り交じらせ待機していたようです。ステージセットは、巨大なマーシャルのアンプのハリボテとか、実際に稼働しているアーケードゲームの機体とか、ピースマークをあしらった星条旗とか、なんか「アメリカ」って感じの愛と遊び心にあふれたカワイ~やつでした。
 開演直前、スタッフが登場。「ライアン・アダムスからのお願いです。ライブ中、フラッシュは絶対に使用しないでください。フラッシュがたかれると、ライアンは倒れてしまうかもしれません! 絶対に、ぜっっっったいにフラッシュはたかないでください!!」と注意事項。ライアンはメニエール病という難病を患っているらしいので、これは本気のお願いなんでしょう。そのタダ事じゃない念押し具合に、観客の空気が明らかにピーンと張り詰めたのがわかりました。しかし、ライアンが姿を表すと……。
 いろんなライブでいろんな観客側の声を聞いてきたけど、「すでに泣いてるやつがいる!」と感じた歓声は初めてでした。もう明らかに愛と涙と熱が違った。びっくりした。僕は去年のセルフタイトル作で初めてライアン・アダムスを聴いた(そしてハマった)という歴の浅いファンですが、あの空間にいたときだけは僕も「10年間待ち続けていた人間の一人」な気がしたくらい、異様な雰囲気でした。
 1曲目「Gimme Something Good」のロックなスタートからもう演者のテンションもバッチリで、観客のレスポンスとの相乗効果でどんどんステージのボルテージも高まっていく。じつはこの曲、スタジオアルバム版の音源はあまり好きではなかったんですが、ワンフレーズ・ワンストロークごとに巻き起こる大歓声も相俟って信じられないくらいカッコよく聞こえました。で、2曲目の「Let It Ride」でいつの間にか僕も泣いてた。
 羽織っていたデニムのジャケットを脱いだ下がメタリカTシャツだったのも最高だった。ちなみにギターの人が Big Star のTシャツだったのも最高だった。マーキー内は蒸し風呂状態で客も演者も全員汗だく。暗かったのと逆光であまりはっきり見えなかったけど、1曲終わるごとにギターを取り替えてたのは汗を拭いてたのか? それとも全部ちがうギターを使ってたのかな? 表情もそこまで見えなかったけど、ライアンは終始ノリノリで笑顔だったと思う。それとギターソロも最高だった。頭が地面につきそうなくらいのエビ反りで掻き鳴らす姿、かっこ良すぎて死ぬかと思った。この人がメタリカT着てんですよ! 最高だろ! 
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 「New York, New York」が始まったときに改めてこのライブの亜空間っぷりを確信したんですが、こっちがいったん落ち着いてシラフでライブ観てるのに、イントロのギターフレーズが聞こえた瞬間に頭がバーン!となって次の瞬間には泣いてた。この人の音楽は、脳を介さないで涙腺に素手で触る力があるらしい。「涙腺直撃」ってこういう意味なんですね。死ぬかと思った。

 後半もいろいろあったはずなのに正直あんまり記憶がなくて、気づいたら1時間経ってました。笑 マーキーのトリ前なんて位置なのに、あんなにいつまでもやまないアンコールは初めて見ました。決して満員だったわけじゃないけど、観客一人ひとりの熱量は今年のフジロックでもトップだったんじゃないでしょうか。最高でした。 


◆Ride @ Green Stage
 ライアンがあまりにも良すぎてエグエグしながらグリーンに戻ってきて、しばらく呆然としたままライドを見てたんですが全然頭に入ってこなくて、しょうがないけど、もったいなかった。ライドもすんばらしいライブしてました。去年のスロウダイヴもベストアクト級の素晴らしいライブだったけど、今年のライドは夜の屋外ステージというシチュエーションの利があった。
 シューゲイザーのライブは照明が重要だと思うんですよ。それこそデッドマウスみたいなダンス系のアクトよりも。 そこのところこのライブはとても良くて、何よりフィードバックノイズの轟音と白のストロボってベストマッチだと思います。あの陶酔感ときたら。
 聴きたかった1stの曲は全部聴けたので(「Vapor Trail」「Dreams Burn Down」「Seagull」)、ラストの「Drive Blind」が始まったところでヘブンに移動を始めちゃったんけど、最後の最後のあのノイズパートはちゃんと聴けばよかった……と後悔しています。今年のフジ最大の後悔。


◆Wilko Johnson @ Field Of Heaven
 天候に恵まれたせいもあって、去年に比べて最終盤のこの時間帯でもまだ体力に余裕があった。ので、死ぬ前に一度は見なければいけないじいちゃんを見に行ってきました。ヘブンの身体に良さそうなカレーを食べながら。
 ライブの初っ端でギターとドラムが思いっきりズレてたように聞こえてずっこけるかと思ったのですが、1分後には微妙にルーズなストロークがリズム隊と絡み合うグルーヴの心地よさの虜になっていました。最小限の3人編成でこんなシンプルなパブ・ロックをやるのが、こんなにカッコいいなんて思わなかった。FKA twigs が無ければこれで締めてもよかったんですが、最初の15分くらいしか見られず残念。でもきっとまだまだ来日するでしょうから心配はいらなそうです。


◆FKA twigs @ White Stage
 さて、今年のフジロックもおしまい。最後に見るのはこの人、FKA twigs。今年2月のリキッドルームでの初来日公演が各所で大絶賛だったので、期待値高めで行きました。
 もくもくと白いスモークが焚かれるなか、シースルーのガウンを羽織った Formerly Known As twigs ことタリア・バーネットが登場。先刻のライアンと比べるとよくわかるのですが、ここで起こった歓声もまた異質で、期待と興奮だけではなく未知のものへの不安感、あるいは「騒がれてるけどライブはどんなもんなんだ?」というある種挑戦的な猜疑心までが含まれていたように思えました。
 しなやかで非人間的なダンス(実際かなり激しい動きだと思う)をしながら表情ひとつ変えずシルキーな歌声を披露するバーネット。僕たちはいま何かとんでもなくおかしいものを見ているのでは? という「わからなさ」がゆえに、ステージから1秒たりとも視線を外せない、という感じで、踊ることも出来ず見入ってしまいました。アブストラクトなトラックはほとんどサブウーファーの低音(息がつまるようなとんでもない爆音)のみで、彼女の声を邪魔しないように中音域以上をほとんどカラにしているかのようでした。序盤のハイライトはやはり「Video Girl」からの「Pendulum」の名曲2連発。「Pendulum」のクライマックスで全ての音がストップし、そこから無音のままホワイトステージの広い舞台を端から端まで跳んで走って踊りまわるバーネット。1分以上もたっぷり貯めたあと、ステージ中央に戻り、再度 "To be yours" のフレーズから歌い始めたところは全身の毛穴という毛穴が開きまくってぶっ飛ばされた。
 途中、銀髪の真っ白な肌をした男性ダンサー(たぶん男性だと思う、中性的なメイクをしていて最初女性かと思った)が登場しバーネットと絡み合いながら激しいダンスを披露したところもすごかった。ここは単純にダンスがすごすぎたので、わかりやすく盛り上がりましたね。
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 そもそも音源のリリース自体が彼女自身の完璧なトータル・セルフ・プロデュースの行き届いたものだったわけではありますが、ライブでもここまで徹底した完璧な世界観が見られるとは想像以上でした。後半は比較的、エレクトロR&B的なトラックが増えてきて、中央にいたドラマーがスティックを叩いて手拍子を煽るシーンもあった。また、終演直前にほんの少しだけ聞けたMCは「サポートに感謝しています」的なごくシンプルなものでしたが、「この人も一応人間なんだな」と思わせるもので、はっきり言ってめっちゃ可愛くていきなり好感度上がった。笑
 正直、かなり賛否あるパフォーマンスだと思うけども、これはノエル蹴って見てよかったなと思います。いやーすごいもん見た。


◆その後
 FKA twigs を見たあとみんなゾロゾロとホワイトからグリーンへと歩き出します。大トリのノエルは twigs より弱冠終演が遅い。ということは……。
 あとほんの少しでグリーンステージに出る、というときに、聞き慣れた「Let It Be」みたいなイントロが聞こえてくると、周りにいたみんなが大歓声を上げ(数分前まで息を呑むように twigs に魅入っていた人たちがですよ)、ドンルクだー!!と走り出したときは多幸感で爆発するかと思った。冒頭から始まる大合唱、そしてグリーンステージについた瞬間に "So, Sally can wait" の声。出来過ぎだ! これがフジロックか! という感じでした。

 終わりは寂しいですが、今年も十分楽しめました。ベストアクトは、
5. Happy Mondays
4. Jim O'Rourke と Gaman Gilberto 
3. FKA twigs
2. cero
1. Ryan Adams
 という感じですね。ライアンがベストはもうぶっちぎり。これだけ熱いオーディエンスが集まって、あんな熱いパフォーマンスを見せてくれたんだから、次の空白期間は長くはならないでしょう、と期待したいところです。ベスト5のほとんどが3日目の出演者なのは別に記憶が新しいからとかではなく、そのくらいこの日に見たアーティストがどれも良かったからということです。Joey Bada$$ とか FF とか Ride だって最高だったんだけどね。ちなみにベスト飯は渡なべの油そばです。
 今年はドラゴンドラ乗れなかったのと、ヘブンより奥に行かなかったのが残念です。その分去年より隙間なく観たいアーティストを見尽くしたのでいいんですけど。あと、去年見ただけですが、やっぱオレンジコートが無いのはちょっとさみしいですね。
 というわけで、行く前は「メンツがなあ・・・」とか思ってましたが、やっぱめちゃくちゃ死ぬほど楽しかったので、できる限り来年以上も行きたいと思います。文中ではあまり触れてませんが、一緒に遊んでくれたみなさんありがとうございました。楽しかったのの半分はあなたたちのおかげです。フジロックは来年で記念すべき20回目とのことで、末永く開催し続けてくれることを願っています。あと、何遍でも言いますが、The Antlers を呼んでください、お願いします。本当にお願いします。
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