3日目。朝ごはんにまず粥を食べに街へ。
Hong Kong 125
 優しい味のダシと豚肉のつみれ?がめっちゃ美味しかった。二日酔いの朝にこの半分の量を食べたい。この日の午前中はいろいろ町中を歩きまわってみて、ローカルフードを堪能しました。女人街という買い物スポットに出向いてみると見渡す限りパチモノのブランド品やらiPhoneケースやらが陳列されていて、「オニーサン、ニセモノバッグアルヨ」と片言の日本語で話しかけられたりして楽しかったです。


 この日は夕方以降に観たいのが集中していたので、3時位までホテルでのんびりするかな~と思っていたのですが、出演者一覧をダラダラと眺めていたところ Sleep Party People というコペンハーゲンのバンドが目にとまったので、見に行くことに。

 バンド名とルックス(みんなウサギのお面をつけてる)、それに上記の曲なんかのイメージでかなりねむたい音楽をやるのかなーと思ったら、ライブではビートこそ催眠的だったもののかなりアグレッシブに踊らせにきてました。最後のほうは客席に飛び込んできてたしね。まあよく考えれば「パーティーピーポー」なんて名前なわけだ。結構よかった。

 実は日本でも見たことがなかったトクマルシューゴまでの間に、いろいろ場内を歩き回ってみました。Mamas Gun というずばりエリカ・バドゥ・リスペクトなファンクバンドがメインステージでやっていたのですが、まだ時間が早いこともあって人が少なく、あっさり最前列までいけちゃったり。
 いざトクマルが始まったら結構お客さんも増えてきた。実にいい気候で快適そのもの。日陰で座りながら和製チェンバー・ポップを聴いてる時間は至福でした。


 このフェスはやはりビールも食べ物も値段が高いのがネックなのですが、 救済措置?として、無料の給水所が至る所に設置してありました。試しに僕も空になったビールのカップに水を汲んでみたのですが、ぬるいし薬臭くて飲めたもんじゃなかったのですぐ捨てちゃった……。ヘタしたらお腹壊すかも、と思ったけどそっちは無事でした。

 フェスでは観たい出演者の重複はつきものですけども、一番悩ましかったのはこれ、マリのブルース・バンド Songhoy Blues と、日本出身ロンドン在住のサイケデリック・バンド、Bo Ningen
 とりあえず開始がほんの少し早かったソンホイ・ブルースのほうを観てみたのですが、アフリカンな純陽性のバイブスにフロントマンのハイテンションなダンスが最高な感じ。フジロックの奥地で見るほうがよく似合いそうなアクトでした。白人の5歳位の男の子がパパと一緒にめっちゃ踊ってたのもサイコーだった(このフェスには家族連れの白人がめちゃくちゃ多かった)。

 けど、とりあえず冒頭をちょっとだけ見てからすぐ隣のステージのボー・ニンゲンへと移動。こっちはすでに凶悪なノイズを撒き散らしながらヘドバンを煽っている。で一旦こっちに映っちゃったら、ちょっと良すぎてソンホイ・ブルースのほうには戻れなかったなー。ひたすらサイケデリックで、インプロのスリリングさと、「アタマのおかしい日本人」という感じのエキゾチシズムと。全部がオリジナリティの塊でした。ドラムの人の見た目が麻原彰晃みたいでヤバかった。
Hong Kong 185


 その後は The Pains Of Being Pure At Heart をちら見しつつ、再び場内散策。ペインズは今でもライブの評価は高いようだけど、やっぱり1st・2nd 期のシューゲイズサウンドのほうが断然好きなので今回はほぼスルーです。
 その代わりにちょっと眺めてきた Flesh Juicer(血肉果汁機)という地元・香港のメタルバンド。 ボーカルがブタのマスクを被ってたりいろいろキワモノっぽい感じなのかなーと思ったけど、ライブは結構「僕の想像するデスメタルっぽい音」そのもので、普通にカッコ良かった。歌詞(広東語?)は知らんけど。笑


 Neon Indian も被ってなければ観たかったのだけど、今回は Chic ft. Nile Rodgers を優先しました。 ネオン・インディアンも冒頭ちらっと見た感じ楽しそうだったんだけどね。VJが原色キツくて酔えそうな感じでした。
 で、シック。実は僕、「Le Freak」と「Get Lucky」くらいしかまともに曲を知らなかったんですが、サイン・マガジンのタナソーの記事を読んで見てみることにしたのです。結果これが大当たり。極端な話、ダフト・パンクのゲット・ラッキーだけ知ってれば十分に楽しめました。むしろそういう初心者のほうが楽しめたんじゃないかというくらい。
 そもそも改めてベスト盤とか聴いてみればわかるけど、シックの曲、超単純!笑 基本的に「踊れ!」しか言ってないんだもん。だとしたら、演奏のバックにサビの歌詞だけ投影しておけば、そこにいる人間を一人残らず巻き込んだパーティーがあっという間に完成してしまうわけですよ。それに加えてあの懐メロ大会のようなセットリストの前では、もう初心者だとかリアルタイムのファンだとか無関係。ナイル・ロジャースのプロデュース楽曲の中から、ダイアナ・ロスやマドンナ、デヴィッド・ボウイやデュラン・デュランまでヒット曲をシック流にディスコ・カバーしていくわけですから。バンドの演奏の強靭さとナイル・ロジャースのカッティングの鋭さは言うまでもないですが、何より凄かったのはコーラスの女性二人の声量。こぶしを効かせた「ライク・ア・ヴァージン」のセクシーさはマドンナのそれとは全く別物になっていて最高でした。
 そして何といってもやっぱりハイライトは「ゲット・ラッキー」に違いない。ナイル・ロジャースが観客に「スマホのフラッシュを焚いてくれ!」と煽り、客席に白い光が満ち満ちたあと、「おれ、この間、ガンに罹ったんだけどさ、ラッキーなことにもうすっかり治ったんだよ! ラッキーだよな!」みたいな泣いていいんだか笑っていいんだかわかんない一言のあとに、例の凄まじい声量で始まる「不死鳥の伝説のように」という歌い出し、そして静寂を引き裂くカッティング! 全コーラス・シンガロングの大盛り上がりで最高でした。

 さて、彼らシックはこの香港でのライブ後に来日を果たし、日本でも2公演を行っているわけです。ただ香港で見たワタクシから少しだけ自慢をさせていただきますと、彼らのギンギラギンにバブリーなライブは香港島の夜景とベストマッチだったのがひとつ。上述の「スマホのフラッシュ」演出も、夜景と一体化した光の海のようで本当に綺麗で、かつ笑えました。もうひとつは、観客の圧倒的な欧米人率の高さ。どの曲も周りがほとんどフルコーラス歌ってたおかげでパーティー気分は終始最高潮でした。
 というわけで、彼らシックは3日間のベストアクトです。もうね、楽しすぎた以外の感想はないです。


 シックを最後まで堪能したのち、慌てて Battles を見に ATUM ステージへ移動。シックと比べるとこちらはアジア系の観客がはっきりと多く、なるほどこの盆踊りっぽいリズムはアジア人好みなのだろうか……などと適当なことを考えながら見てました。何だかんだこっちも普通に最高。「Atlas」のイントロが何だか機材トラブル?のようでやたら長かったけど、長けりゃ長いだけ嬉しい曲なので結局最高でした。かっこよかった。


 最後は New Order。別に詳しいわけではないですが、さすがに知ってる曲ばっかりやってたので楽しかった。もっと歌謡曲みたいなフィーリングでライブをやるのかなと思ったけど、普通にバッキバキの「Bizarre Love Triangle」とか良かったですね。僕の前で、妙齢の白人のお母さんがずっとお尻を振りながら踊りまくってたのがよかった。最後、時差1時間の日本でちょうど日付が変わって月曜になったくらいの時間から始まった「Blue Monday」には切なくなってしまった。楽しかった3日間でした。




 翌朝、ホテルからチェックアウトし、空港へ。お土産を買ったり、ここまで街中で食べそびれていた点心を食したりしてフライトを待ち、帰国。快適そのものの旅行でした。
 実際に行ってみて思ったけど、海外旅行慣れしている人なら、ひょっとするとフジロック初参加よりも参加のハードルは低いかも。関東からならまだしも、関西から苗場って遠いですしね。服装も軽装で済むから、「フェス用」に揃えなきゃいけないものもほとんどない。チケットもネットで決済して PDF で貰えるし、宿泊先さえ確保できれば言葉もそこまで困らない。
 2008年からスタートして、年々出演者も充実してきている新興フェスであるこの Clockenflap。今のところ、総合的なラインナップの魅力で言えばさすがにフジロックやサマーソニックには及ばないと思いますが(リバティーンズみたいなちょっと特殊な例は除く)、今後もっと大規模化して、メンツが充実してきたら、また行ってみてもいいかもなと思いました。何より、日本のフェスのメンツがドメスティックに寄ってきている現状からすると、なかなか見られない海外のアーティストを見るための選択肢のひとつとして頭に入れておいてもよいかもしれないですね。何より海外旅行って楽しいしね。


(おまけ)
 この翌週は King Crimson のライブを見ました(@bunkamura オーチャードホール)。レジェンド中のレジェンドの13年ぶり来日ということで滅多にない機会、十分に楽しみました。原曲に忠実なアレンジの曲もあればかなり挑戦的に変化させてきた曲もありましたが、どれも一糸乱れぬ超絶技巧で、トリプルドラムに圧倒された夜でした。やはり一番凄かったのは本編ラストの「Starless」のインプロヴィゼーション、照明が真っ赤に染まっていく演出も完璧で、後にも先にもライブを見ながらあんなにドキドキすることは無いかもしれない。アンコールのラストに聴けた「21st Century Schizoid Man」も当然、凄まじかった。あまりに統率が見事なので、そこにある種の「枠」「壁」が見えてしまったのがちょっとだけ残念でしたが、貴重な体験でした。チケット代高かったけど……。

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